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by kinaruf
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読書する人
2007年 01月 17日 |
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何を読んでる?



 パリは晩秋から冬にかけてはどんよりと曇った日が多い。でもこういう風土が思想や文学を生み出す。常夏の国ではなかなか思想や文学というは生まれない。だからハワイ出身の哲学者や文学者というのはあまり聞いたことがない。少し暗い場所、風土のなかでいつの時代もどこの国でも思想や文学というものは生まれてきた。
 
 セーヌ川の橋のたもとでず〜と本を読んでる若者がいた。お昼過ぎとはいえ、時折川沿いを吹いてくる冬の風はとても冷たかった。通り過ぎる人々は誰もこの若者に目を向けることもない。「こんな寒いとこで読書するのはおよしなさい、風邪をひくよ」という人も当然いない。この若者も誰が見てるかとかそういうことは全く気にしない。彼はただ集中して本を読みふけっていった。この風景を見てここがまぎれもなくパリであるということを僕は実感した。
 
 しかし、フランス人というのはみんながものすごく立派で思想を持っているというわけではない。わずか1パーセントの人たちがものすごく真剣に物事を考え、この人たちの献身的・ひたむき・涙ぐましい努力をすることによって国が保たれており、この人たちのおかげで残りの99パーセントの人たちが大過なく怠けながらのんびりと過ごせているとも言われる(やや大げさだが…)。だからこの国には落ちこぼれや負け組というのは存在しない。なぜなら、こぼれている方が圧倒的多数だからだ。だからこぼれているのは至極普通のことで、すなわちそれはこぼれているということにならず当たり前のこととなる。このごろよく聞く格差社会などということとも違う。
 
 エレベーターやエスカレーターなど公共のものでも壊れたままのものが多い。メトロの駅で、昨日は上りが壊れていたと思ったらそのまま3日間ぐらい直されないままでやっと直ったと思ったら,また次の日には下りが壊れて動かないままなどということは常のこと(特に旅行者の少ない郊外の駅。目立つところはちゃんとしてたりする。)。動かないままの長〜いエスカレーターを階段のようにしてみんな登っていく。だ〜れも文句一つ言わずに…。動いている方がめずらしいらしく、「ほー今日はめずらしく両方とも動いてるね〜」と関心する人までいるらしい(笑)。電気製品など買ってみたら壊れてるのは日常茶飯事。安ホテルのシャワーの栓がまっていて気持ちよくシャワーを浴びてる間に部屋中大洪水などということもある。ヘアドライアーが火をふくとか…。ハプニングは数えきれず退屈することはない。もっともリッツホテルなどの超高級なホテルではこんなことはないだろうけれど。フランス製というとなんでもご立派と思われているが実はそうではないことだけは確か。良いものは確かにものすご〜く良い。けれどもそれはごくわずかのもの。しかし、そのごくわずかの超一級品に支えられて世界に名だたるフランス・ブランドは保たれている。この構造がそのまま人間全体の構造でもあるような…。

 でも、なんとなくこういうところがよい。日本だと地下鉄の駅でエスカレーターが1週間も動かなかったらどうなるだろう。きっと駅では苦情の電話が鳴り続け、抗議をする人の怒鳴り声が駅の構内をエコーし続け、TV局が押しかけてニュースになり、駅長は首に、それどころかあげくの果ては国土交通省の大臣まで首を切られかねないだろう。(笑)あなたがもしパリを旅する機会があったら壊れているものを見つけて欲しい。きつとたくさん見つかる。そして見つけたらまぎれもなく自分はパリにいるのだということを実感して喜んでほしい。(笑) 

 それにしてもこの若者は何を読んでたのだろう。こういうところが気になるところが僕が日本人である証拠。個人主義には生きれない。でもなんだかこういう若者が存在していることが世界の将来は必ずしも暗いものじゃないなどと思えてもくる。やはりヨーロッパから何かが始まるのかもしれない。しかし、読んでたのはエロ三文小説だったりコント大全集だったりすることもありえなくもない。それならこの集中もよ〜く説明できたりする。そういえば、これらもまた少し暗い場所で生まれて来た。(笑)
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